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Diploma2011 中間発表

B4の丸山璃莉です。無事(?)、中間発表を終えたので経過を報告させて頂きます!


 

「働く場所」

「働く場所」としてオフィスという場所は発展を遂げてきた。その結果、都心の高層のオフィス群などでは経済至上主義によってフラットな床が積まれ、変容性の高い均質化したオフィス空間が展開されてきた。さらに、今や情報化社会によってパソコン1つでどこでも仕事が出来るようになり、ある意味都市その

ものがオフィスのような空間になりつつもある。「働く場所」の場所性や空間性というものは失われていってしまうのだろうか。

町工場の町「大田区」

一方で、大田区には町工場という「働く場所」がたくさんある。工場数4,362、従業員人数35,741人と共に東京都の市区町村中1位を誇り、そのうちの80%が従業員1人〜9人の小規模な工場である。驚くべきことは、その小さな工場たちがロケットの金属部品などをつくる世界的技術を持っていることである。彼らは基本的に工場に近い、もしくは一緒の住まいを持ち、従業員同士が家族ぐるみで仲がいいのはもちろん、地域内で「仲間まわし」=通称「ちゃりんこネットワーク」という、自社だけではできない製品の加工などを近くの工場へ自転車で持っていき、複数の工場を回って一つの製品や部品にまとめあげるという独自のネットワークを形成している。都心のオフィス群などで働く、企画した仕事を従属会社などに分割して依頼し、戻ってきた仕事をまとめあげるような仕事をしている人たちを仮にプロデューサー的役割であるとすると、町工場の職人はアーティストであると同時にプロデューサーでもあるのだ。私はこのような小さな集合体が大きな集合体に勝るとも劣らない優れた技術を持ち合わせていることや、自立性の高い地域形成、またコミュニティの在り方の理想論を具現化したようなネットワークの作られ方に非常に魅了され、都心のオフィスには作り得ない「働く場所」の在り方の可能性を感じている。

町工場の危機

しかし、このような優れた工場もまた後継者不足や新たな住宅の増加による操業環境の悪化によって80年代以降減少をつづけている。この土地が持つ本来の魅力を損なわずに、未来に残していく手助けができるような建築を考えたいと思う。また、都心のオフィスでは働く作業を細分化、分業化していくことによって技術の高度化や効率化を図ってきたが、いったん根詰まりが置きたときに全ての機能が麻痺するような危うさを私は感じている。東京中心部の過度の依存を緩和し、自立性の高い「働く場所」の在り方を考えたとき、それは「働く場所」の在り方全体を再考することに通じるかもしれない。そのようなことを心に留めておきながら、この卒業設計を提案したいと思う。






site

大田区 ー 羽田・糀谷地域

糀谷・羽田地域は、大田区を代表するものづくり産業の集積地であり、住工混在地域を形成しているが、近年工業専用地域を除いた地域において、移転・廃業などによって工場は減少傾向にある。こうした工場跡地に集合住宅などの建設が増加し、工場主と建設主や入居者との間で工場の操業をめぐる紛争が生じ深刻化しつつある。また、大田区工業の特徴である工場ネットワーク機能   を維持・増進するため、工場跡地に集合住宅ではなく工場などの産業を誘致する、または集合住宅の開発区域内に一定の貸工場を整備するなど、工場数の減少を食い止める取り組みが求められている。糀谷・羽田地域は、このような住工調和を図る土地利用や住宅と共存する工場建設を推進する為に、住工調和型再開発としてのモデル開発地域の指定等をめざして調整を進めている。

Traffic /

大田区は東京都心から川崎・横浜に至る連担した都市軸上にあり、首都圏の中でも交通の利便性に恵まれていたため、広域的な交通や物流などの都市機能が立地し、これまでの首都圏の発展の一翼を担ってきた。また、空の玄関口である羽田空港は平成2210月に再拡張・国際化し、海の玄関口である東京港湾においても、大型コンテナ船が利用できる埠頭整備などの港湾機能の拡充が進んでおり、更に東京湾を含めた京浜港が国の「国際コンテナ戦略港湾」に指定されるなど、大田区は首都圏における空と海と陸の交通結節点としての役割が強まり、将来に向けて大きな発展の余地を有している。

Human resource development /

町工場が抱えている問題として、後継者不足が挙げられている。大田区では、人材育成を支援する為の施設の整備や取り組みに対する助成金の交付などを積極的に行い、次世代を担う小中学生のものづくりへの関心を高めることを目的として区内・近隣の教育機関と連携した人材育成を目指している。また、グローバル展開に不可欠な人材を育成するために外国人の受け入れも積極的に支援している。

Tourism / 羽田空港の再拡張・国際化を契機に、海外からの観光客の受け入れをも視野にいれた観光施策を推進している。糀谷・羽田地区はこのような空港臨海部地域に隣接した、日本の玄関口であるということから重要な位置を占めている。

Environment / 糀谷・羽田地域には一部の地域において防災公園などが整備されてはいるが、地域全体では公園や緑地など潤いのある環境は充分であるとは言えない現状にある。


建築所在地

東京都大田区本羽田2-12-1 現・本羽田二丁目第2工場アパート(テクノWING)敷地

*本羽田二丁目第2工場アパート(テクノWING)

産業と生活が共存する街づくりを進める「住工調和環境整備事業」の一環として大田区が建設した工場アパート。工場棟と職住近接のための入居者企業用住宅(ウイングハイツ)を併設している。工場棟は5階建てのビルに48の工場ユニットを擁する首都圏最大級のもので、都市における産業立地環境整備のモデルケースとして位置づけられている。集合住宅のようなファサードにすることで周辺環境に配慮しているが、建築自体は工場ユニットに対して廊下が接している団地ような簡素な作りであり、大田区の町工場が持っている小規模集合体のようなスケール感は失われ、共有空間の作られ方も十分であるとは言えない。


research

 


diagram

 


今後の課題

 

◎スケールメリット/共有することによって得られるメリットを考える

◎工場部分と住宅部分の関係性だけではなく、工場同士、住宅同士の関係性を考える

◎モデルの組み合わせではなく、大きな視点からまず計画する

◎周辺敷地から構成されるちゃりんこネットワークのループの一部となるような計画をする

◎車、自転車、人(従業員、観光者)という3つの要素をきちんと動線計画する

◎コーポラティブである以上ある程度キャラ付けが必要/それと同時に、賃貸である工場自体はフレキシブルな仕組みが必要(平面においても断面においても)

◎現状の垂直に伸びた工場アパートの問題点を考えることで、工場アパートのオルタナティブな在り方を提案する


以上です!卒業設計提出まで残り一ヶ月半、精一杯頑張りたいと思いますのでご指導よろしくお願い致します!

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