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現代建築レビュー7月号

B4赤城です。2021年11月16日に実施しました新建築2021年7月号の現代建築レビューを投稿いたします。 


間宮:7 月号で気になった建築はなんですか?
志藤:私は、LIGUNA/0がいいと思いました。 どんどん広がっていこうとするコンセプトに対して、建築がよく合致しているように感じられました。断面的に機能が分割されながらも、半分以上が地域に開かれるような構成で、社会に接続を目指す LIGUNA の生態系のような事業方針に対して、建築がよく応答していると思います。 閉鎖的なオフィスではなくオープンで、廃棄物を出さないために転用された椅子など、建築に限らず扱われているプロダクトの可変性も魅力的です。
柳井港北町みんなの公園に魅力を感じました。本来パブリックに、オープンに設計される筈の公園に、壁が敷地境界線ギリギリで建てられていることに衝撃を受けました。この斬新さは公園の在り方の新たなタイポロジーとしての可能性を持っていると思います。 また、この公園に限らず向ヶ丘遊園の芝生広場に人が密集したり、ブルーシートを広げたりしている様子を見て、地元群馬とは集まり方に差異を感じました。よく訪れていた運動公園などで感じた活気のなさを解消させるヒントがつまっているように感じられます。
吉村:先日訪れたばかりということもあり、渋谷区立北谷公園がいいと思いました。建物からも公園通りからもアクセスが可能なため、色々なところから人が集まっていたのが印象的です。 並びに印象的だったのが、階段で佇む人々が多かったことです。周辺の地形に応答するように設計されたこの公園は、ランドスケープ計画にあった階段設計がなされていました。地形を活かしてレベル差を生みながらも、居場所としても機能も持ち合わせた階段設計の巧みさに大きな魅力を感じます。
柚木:私は、ブルス・ドゥ・コメルス/ピノー・コレクションが気になりました。西洋建築の中に、大胆にコンクリの壁が挿入されている異質さに驚きました。 本来であれば、美術館に訪れて最初に壁画が目に入る筈です。ですが、改修により、最初に銅像に圧倒され、その後さらに大きな絵画に視線を誘導させられるシークエンス設計が素晴らしいと思いました。
柳井:配置図からもフランスらしい周辺の街区が見られ、中庭の多さなども日本と大きく違う点ではないでしょうか。
赤城:私は瀬戸内醸造所がお気に入りです。外構計画が好きなので、しまなみを連想させる飛び石を使った散策路設計に惹かれました。 また、元造船所跡地という瀬戸内らしい歴史的文脈を、瀬戸内の海に開く地形として受け止め、それぞれのコンテクストをうまく接続し建築に落とし込んでいるのもとても魅力的です。比較的単純な断面設計ですが、軸線によって海と山と町を接続させつつ断面的にも視線を誘導しているあたり、テーマを失わずに詰め込みまくる菅原さんらしさが感じられました。


間宮:今回 7 月号の新建築では、まず都市部の公共空間について触れられ、この先のオフィスの変化や可能性について検討されていました。その後、地方のパブリックスペースが取り上げられていましたね。 公園に隣接する建物の設計、広場と関連性、公園から連続する街など様々な要素があったと思います。
間宮:それぞれの居場所について、街への開き方、空間の好みなどの観点からみて好きな建築はありましたか?
柳井熊野東防災交流センターが好きです。形状としても周辺の山々と馴染みながら、螺旋の形で街に開いています。建物にスロープが介入していく形が、 災害などの歴史性、コンテクスト、環境などの要素を包容し建築としての完成度に圧倒されました。
赤城:都心にあったら、螺旋の強い形から強烈なシンボル性を抱いてしまうけれど、山間部の複雑な道路形状などによって景観に馴染んでいる点が圧巻です。
柚木石巻の東屋は、新建築の中では珍しい分散型の建築で、どこか卒業設計っぽさを感じました。既存建築の近くにある為、その延長で利用されることが多いのではないでしょうか。川沿い8キロに広がるこれらの建築群は、街に馴染み地元住民に愛されるものになっていくと思います。
間宮:新型コロナウイルスの蔓延を経て、働き方や居場所のあり方も大きく変わったと思います。わざわざオフィスや空間に足を運ぶ理由を考えることで、今後建築に求められる意味合いを紐解くことができるのではないでしょうか。


総括
オフィスや公園、パブリックスペースの空間や雰囲気の良さを建築的に理解し、都市部から山間部まで文脈の読み込み方のヒントも得られた回でした。

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