B4の山﨑です。2022年7月11日に実施しました、新建築2022年5月号の現代建築レビューを投稿いたします。
居城:5月号で気になった建築はなんですか?
末吉:日本ではまだ木造高層建築の事例がすくないので、私はTAMADIC名古屋が気になりました。木と鉄筋コンクリートの混構造でできており、柱に用いられているCLTパネルが鉄筋コンクリートの型枠となっているため、打設後も廃棄する必要がなく環境的にも、コスト的にも素晴らしいと思いました。
岡田:私はICI STUDIO W-ANNEXが気になりました。歴史的建造物の保存に対する問題に取り組んだ事例で、対比と調和をコンセプトとしており、対比は内部の閉鎖空間と開放的な木造のファサードなどで見られるが、調和はあまり感じられず疑問に思いました。
金川:私は琲庵が気になりました。VUILDの事例でよく見られる小さなパーツの組み合わせでできており、茶室なのに真っ黒な見た目に面白さを感じました。また最先端のデジタル技術を駆使しており、koyartを通じてモデリングしたものを実際に作る難しさを知っているので、施工方法には高い関心を抱きました。
山﨑:私は立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレが気になりました。丸太を使用しているため加工時に廃材が少なく、また曲がりや枝分かれの多いため普段の建築では見られない広葉樹を使用しており、環境的に高いパフォーマンスを有しているところにこれからの建築の可能性があると感じました。
高田:私は大濠テラスが気になりました。現代の最新木造技術と日本古来の木造技術を組み合わせてできており、トンカチさえあれば誰でも作れて、尚且つビジュアル的にも優れている点を評価すべきだと考えました。
櫻井:私も大濠テラスが気になりました。ジョイントを木だけで作るとこれほど建築が美しくなるだと関心を抱きました。誰でも作れるというコンセプトで地域の人がどれだけ関わっているのか不明ですが、実際に多くに人が関わり合い可変性を持った建築なら素晴らしいと思いました。
宮川:私はモクビル南葛西が気になりました。全9階建てで、上部4階が木造で下部5階が鉄筋コンクリートでできており、鉄筋コンクリート9階建ての耐震構造と同等の費用で免震を備えているところに興味を持ちました。ファサードに木質感が現れていないところは少し疑問を持ちました。
居城:私はあわくら会館が気になりました。梁の形が特徴的で、構造的にも意匠的にも優れており、大きな空間を木造でつくっている点に興味を持ちました。地域の木材を使用しており、長く存在する建物だからこそ地域について深く考えているのだと思いました。
居城:琲庵の茶室について、私は初め見た時はカフェに思えたのですが、茶室と言っていいのでしょうか?
金川:茶室ではあるがコーヒーを提供しており、茶室の厳しいルールなどの概念を用いているのではなく、茶室自体が持つ形や要素を再解釈して作り出したものであるように思いました。
宮川:いわば令和版の茶室で、過去の茶室を現代の状況や技術に置き換えた時に、どのような形になるかを体現したものだと思いました。
櫻井:新しい概念として作るならいいと思いますが、茶室は歴史が長くルールなどの概念が重要であるため、茶室というには些か不満を持つ人が出るように思いました。
居城:琲庵などの最新のデジタル技術を用いた事例と大濠テラスなどの昔ながらの技術を使用し誰でも作れるという事例がありましたがどのように思いますか?
金川:誰でも作れるという目的は同じで、企画化を簡単にするか、デジタル技術を使用し施工を簡単にするかの違いだと思います。
高田:デジタルの方が誰でも作れるという点では優れていると思っていて、電動工具を使わずに建築ができると言ってもそれを実行する可能性は低く、時代の流れを考えるとデジタル技術を使用した作品の方が注目されると思います。
末吉:以前、坂茂さんが木造を使用するなら接合部など全て木で作らないと意味がないとおっしゃっており、その点大濠テラスは全て木で美しい建築となっていて、デジタル技術は重要なものとなってくると思うが、建築をやっている人は歴史的技術に目を向け、接合部をどう綺麗に治めるかなどを考えるべきだと思いました。
総括
今回は木造建築についての様々な事例を見ていき、最新技術と伝統的技術の有用性を議論を通じて感じると共に、木造の流行によって木造建築が都市をどこまで侵食していくのか考えさせられる回となりました。