B4の吉田です。2024年11月7日に実施しました、新建築2024年8月の現代建築レビューを投稿いたします。
吉田:8月号で気になった建築は何ですか。
丸山:私はDLT恒久仮設木造住宅が気になりました。恒久と仮設が矛盾したものであるように思っていたので、そこに興味を持ちました。不完全さを残すことに意味があるとすれば、仮設住宅はあくまで「仮設」であっても良いのかなと思いました。仮設住宅の在り方は日本と世界、建築家と行政で食い違う部分も多く、「仮設+○○」や「仮設の恒久化」が適切であるか、今後考えていく必要のあるものだと考えています。
吉田:私は森山ビレッジNESTING五城目が気になりました。ぞれぞれの住戸が別々の世帯によって考えられていることもあり、異なる個性的な平面プランをもっていることが分かります。とはいえ、サニタリーやキッチンの位置が似通っている平面プランも見られ、入居者同士で意見交流や建築家からの助言などがあったように感じました。
石本:私はSHINJUKU NEW VILLAが気になりました。曲線は変化が見やすく空間を多様にしやすい一方で、納まりといった条件が増えるため扱いづらいと考えています。この建築では、自由に居場所を探して生活できるといった開放性が平面に曲線として表れており、コワーキングスペースなどを考える際に参考になると思いました。
吉原:私は神宮前のヴォイドインフラが気になりました。斜面に沿った開口の開き方がとても気になっており、具体的には、開口によって明るさを感じられ、サッシ部分にヒノキを使うことで全体的に色味も良くなっていると思いました。その一方で、視線制御という狙いで用いられているすりガラスの位置が、“どういった規則のもと決められているのか“、“本当に視線制御ができているのか“疑問に残りました。
美和:私は8 housesが気になりました。一番面白いと思ったポイントは、内部の設計をするのと同時に、外の設計にも力を入れているところです。コロナ禍を通して、“気軽に出られる身近な外“が求められる場となってきており、そこから身近な外に当たる部分をより強く設計していこうということが意識されたようです。
尾崎:私はnookが気になりました。それぞれの部屋の開口部の位置は、周辺の緑と空の景色を眺望できるように調整されています。コーポラティブハウスであるため、それぞれのメゾネット形式の住戸に個性が表れています。こういった住民の要望を反映したり、個性のある形を集めたりした集合住宅は、普通の集合住宅とは違った特徴的な外観が生まれるところが面白いと思いました。
吉田:話してもらった事例の中で気になるところや、他に気になった事例はありますか。
三橋:吉原さんが紹介されたヴォイドインフラについて興味を持ちました。この建築はパサージュのようなヴォイドの開け方をしていると思いつつも、平面的にみていくと、ガラスに面しているところは思っているほど開けてないように感じました。
美和さんの8 housesについては、外から作るということに関しては、新しい集合住宅の設計の仕方かなと感じました。世田谷などの自然の少ない住宅街となると、こういったプライベートな教養空間の作り方というものが大事になると思っており、可能であればテーマを持った共用空間を設計するのが重要だと考えます。一方で、都市的なところであれば、曲線を用いるなどの形態を変化させることで対応する必要があると全体を見ていて思いました。
丸山:私は8 housesの外から作ることによって形が複雑であったり、スケルトンインフィルを別々の人が作っていたりといった、統一されていないばらばらな感じがコミュニティを生むのかなと考えました。ところどころ隙間が見え隠れする構成になっており、こういうハード面からの作り方もあるのではないかと思いました。
総括
今回紹介された、曲線を用いない単純なつくりの建築は、曲線にはない背景立てがあり、それも大事なのではないかと思います。森山ビレッジは単純だけれどもここまで評価されているというのは、建築の民主化といったストーリーも評価されてくる時代だからかもしれません。その土地ならではの問題をくみ取っていくことも、形態と同じくらい大事だと思いました。