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解、のちに現 -分解された空き家における新たなふるまいの観察-

B4の建入です。卒業設計の梗概を掲載いたします。

 

1.背景

1-1分解世界
普段私たちは、料理を「作る」、年齢を「重ねる」、といったように生活の中で常に生産し、作り上げるといった足し算や掛け算の世界を生きていると思わされている。しかし、種が殻を割って発芽するように微生物が落ち葉を細かく砕くように、実は私たちは破裂や分解の世界も同時に生きている。
1-2反新品社会
新品に溢れた煌びやかで華やかな社会。そこには傷やシミなどなく、綺麗な物しかないがどこか居心地が悪いように感じる。例えば、一枚の戸板が修繕されたときに得ることのできる「改められた新しさ」というのは新品社会には存在しない。戸板はそこに存在していた時間的連続から一度切り取られ、周囲との関係性が一度消去される。それを再配置されることにより時間軸や関係性が、更新されるといった点でこの試み
はある種新しい。
1-3新品社会に取り残された空き家
新築至上主義という日本の文化は、成長期に大量生産され一時の需要を担った住宅にとって「空き家」という残酷な現実を招き、街に不気味な雰囲気を漂わせている。歴史的価値のあるものは保存される一方で一時の役目を終えた建築物たちは放置されている現状である。

2.敷地
町田駅から徒歩30分、バスで10分ほどの距離に位置している南大谷が本設計の敷地である。成長期に多くの住宅が作られたものの高齢化による空き家問題や、2022年の生産緑地問題がパラレルに存在する都市郊外の一例としてこの地を取り上げた。30年前までは田畑が広がり、周辺の宅地化が進む一方で農地や緑地は適度に残されそれらが、地域住民のコミュニティの場であったがそれらも存続の危機に面している。

3.方法
3-1プログラム
2017年6月の生産緑地法一部改正で、
・生産緑地は500㎡以下にならない範囲で全体の20%以内なら解除可能。
・生産緑地地区内で、直売所や加工場・農家レストランなどの設置が可能。
以上のことが可能になった。これを踏まえ設計のプログラムを策定する。生産緑地と空き家が隣接している場合、土地の所有者が、所有地の20%以内を空き家所持者(所持企業)に売却。空き家に対して増減築の操作をすることを可能とする。
3-2分解方法
空き家問題の解決策を考えていく中、自然界に目を向けると1-1に挙げたように、生物の死骸や排泄物が土壌生物によって分解され世界の循環を保っていることに気づいた。つまり彼らがいなければ、循環する方法を失い、自然界のバランスは大きく崩れてしまう。そこで本提案は、この分解プロセスが建築界にも発現するかを試行する観察実験とする。これらが可能になった時、建築は1つの生態系として命を持ち得ることとなる。
3-3分解操作の具体化
分解という操作を「属性の変化、機能の変化、境界の縮張」と3つに具体化し、壁面機能の変化や、アパートという属性からの乖離キッチンの拡張、等の操作を実行する。その「操作」によって現れる2次的な現象を観察し、以前の意味性が消去されその物たちが再定義されることで、異なった振る舞いをすることを目標にする。

4.結果
無用の長物として、社会からゴミ扱いをされてきた空き家たちは、建築界の分解という操作を得て、新たな命を宿しこの世界に存在し続ける。

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