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JR渋谷駅改良工事中のコンコースにおける空間体験の変化に関する研究

B4の新沼です。2023年春学期に取り組んだ研究内容について報告いたします。

1.序章

1-1.研究の背景

JR渋谷駅改良工事は、渋谷再開発計画における事業の一つで、2015年9月から全体工事が始まり、2027年に完了が予定されている⻑期にわたる大規模な工事だ。

工事内容は大まかに、線路切替工事(埼京線ホームの移設および山手線ホームの1面2線化)・駅コンコースの拡充・バリアフリー設備の整備・東西自由通路の整備という大きく4つの工事が計画されている。インフラとしての機能を保ちなから工事が進行するため、特に線路切替工事に関しては段階的に行われる。発表当初は4ステップ、現在は追加で5ステップ目が新たに加わり計画されている。工事期間中それぞれの工事とその間のそれぞれの期間において、利用者の通行を妨げないように仮囲いが工事現場を覆い、進行に応じて一般利用者の体験する空間も変化する。そこで、一般的な建築と比べ、変化の割合が多い工事期間中の空間にしかない可能性があるのではないかと考えていきたい。

1-2.研究の目的

JR渋谷駅改良工事の線路切替工事の各ステップで変化するコンコース空間の変化および、駅利用者の空間体験の変化を明らかにする。

1-3.研究の位置付け

真壁による自身の著書1)などにおける渋谷駅再開発に関する言説があり、渋谷駅改良工事中のコンコースでの空間体験の変化、特に仮囲いの素材に関しての言及や、写真撮影による記録がなされてきた。しかし、工事中の駅コンコースでの空間体験に関する既往研究自体は見られない。

本研究では、公開されている図面などを中心に手がかりとして、空間体験の変化を明らかにする。

2.JR渋谷駅改良工事に関する調査

2-1.JR渋谷駅改良工事の概要

渋谷再開発は、渋谷区が策定・公表した、駅周辺におけるまちづくりの指針を示した「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」をもとに始まっており、渋谷駅改良工事はその取り組みの一つである。JR東日本の発表によると、災害に強く、めぐり歩いて楽しい国際的な観光文化都市「渋谷」の実現を目的に、交通結節点機能の強化、渋谷駅の機能更新と再編、駅ビルの再開発と一体的な都市基盤の整備が行われることとされている。

図1 完成時のイメージパースと乗換動線2)

2-2.線路切替工事の各ステップとその間の工事内容

線路切替工事には5回の工事があり、それぞれの工事が運休や通行止めを伴うため、一般に公開されている。また、改札の移設やコンコースの工事もそれに伴い段階的に行われてきた。

図2 線路切替工事の5つのステップ2)

3.コンコース空間の図面化

3-1.図面化の方法

JR東日本や自治体が公開している工事の図面等をトレースし継ぎ合わせた図面を作成する。線路切替工事の各ステップの開始前・終了後で、どのように空間が変化しているかを調査の対象とすることで、線路切替工事が段階的にもたらす空間体験の変化を調査する。

3-2.図面化の結果

ここでは、代表的な4つの時点での図面を取り上げる。

図3 step1の後の各階平面(左から1F,2F,3F)

図4 step2の後の各階平面(左から1F,2F,3F)

図5 step3の後の各階平面(左から1F,2F,3F)

図6 step5の後の各階平面(左から1F,2F,3F)

4.分析

得られた図面を用いて、他線との乗換動線の変化と、空間の変化によるコンコースからの景色の変化に焦点を当てて分析を行う。

4-1.山手線外回りから渋谷駅の北西側へ向かう動線

ハチ公改札変更に伴いハチ公口に面する階段が利用停止されたため、ハチ公改札から短い距離でスクランブル交差点に到達できていたルートが使用できなくなり、南改札から出場し西口から東急百貨店跡地を回り込むルートが残った。(②→③)南改札の移設後は、東口から駅東側に沿って、宮益坂口とハチ公口を接続する連絡通路を通り抜けて向かうルートも利用しやすくなっている(⑥、⑦、⑧、⑨)が、step4で山手線ホームが内回りホーム側で一体化したことにより、外回りからハチ公改札側の1F地上階へ降りるルートが再び使用可能になった。(⑦→⑧)

図7 山手線外回りから渋谷駅の北西側へ向かう動線の変化

4-2 山手線内回りから東京メトロ銀座線渋谷駅への乗換

図8 山手線内回りから銀座線渋谷駅への乗換動線の変化

銀座線ホームの移設前は出場したすぐ正面に相対式ホームがあったため、短い距離ではあったが、閉鎖的な動線であった。(②)また、屋外との境界がフェンスで仕切られた開放的北側通路が追加された(③→④)ことにより、銀座線の線路と、渋谷駅北側の周辺建物の上部が見渡せるようになっている。

5.結章

5-1.結論

線路切替工事の前後で、利用動線や駅周辺との関係といった利用者のコンコース空間での体験の変化を明らかにした。また、JR渋谷駅改良工事だけでなく、接続する東急百貨店の解体や銀座線渋谷駅のホーム移設なども利用者の空間体験の変化をもたらしていることが明らかになった。

5-2.今後の展望

本研究では調査の範囲をコンコース空間に、調査する時間を線路切替工事の前後に絞ったが、さらなる調査でJR渋谷駅改良工事着工から現在まで続いている空間体験の変化の全体像に焦点を当てることができるであろう。

参考文献

1)真壁智治『臨場 渋谷再開発工事現場』,2020年1月8日

2)JR東日本『JR渋谷駅改良工事の本体工事着手について』,2015年7月14日,https://www.jreast.co.jp/press/2015/20150712.pdf

3)JR東日本『渋谷駅 山手線内・外回り線路切換工事に伴う列車の運休について』,2023年8月8日https://www.jreast.co.jp/press/2023/tokyo/20230808_to01.pdf

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