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カステルヴェッキオ美術館の開口部にみられるカルロ・スカルパの修復手法に関する研究
学部4年の山田です。春学期の小論文の成果について報告します。 序章 研究の背景・目的 イタリアの近代建築家カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa,1906~1978)は「改修計画における彼の諸々の作品は、まさに彼の本領を発揮した傑作」と評されており、中でもカステルヴェッキオ美術館(Castelvecchio Museum,Verona,1958-1964)は「再生建築の模範」とされている。カステルヴェッキオ美術館における修復の手法は「創造的修復」や「レスタウロ」と称され、一般的にはもともとの価値を損なわず、新旧が交じり合うことでその価値を向上させるような修復手法であるとされる。スカルパは寡黙な建築家であったことから残された言説は多くないが、設計時のドローイングが数多く残されている。 カステルヴェッキオ美術館内の床と壁の取り合いを見ても分かるように、スカルパ...
屋上の利用からみる都市像
-銀座を対象として- B4の吉村です。春学期に行った研究について掲載させていただきます。 第一章.序章 1-1.研究の背景・目的 快適性、利便性を追い求め、都心部には高層ビルが隙間なく建ち並んでいる。このような人間の利己的な都市の発達は様々な問題を抱えている。密集したビル群は人々から外部空間を奪い、地面のコンクリート化はヒートアイランド現象や自然の減少、洪水などを引き起こしている。 その中でビルの屋上は道路や動線に縛られない独立性の高い新たな都市の敷地とまで感じる。これまで機械室としての機能しか持たなかったが、最近では環境対策としての緑化など屋上の新たな可能性が模索されている。 都市に残された外部空間である屋上の在り方、関係性、分布、設計手法を明らかにすると共に、屋上を媒体として都市を見る。 第二章.研究の方法 2-1.研究の対象 銀...
天井デザインからみた美術館の空間形成の変容に関する研究 –日本国内にある戦後に建設された美術館を対象として–
修士2年の田中です。修士研究の途中経過を報告致します。 1.研究の背景 戦後の日本において、1951年の神奈川県立近代美術館(設計:坂倉準三)が初めての公立美術館として開館したのを皮切りに、今日まで多くの公立・私立美術館が全国各地に建設されてきた。 磯崎新が「造物主義論」の中でも述べているように、美術館建築は年代によって大きな枠組みとしての潮流があり、彰国社が刊行している雑誌「ディテール」でも美術館建築の年代での流れが語られ、WEBサイトの「10+1」や「美術手帖」では磯崎氏の提唱を引用しつつ、今後の美術館がどうなっていくのかを主題とした記事が掲載されている。 この美術館の潮流を語る際に、建築のどこか一つの構成要素に着目してまとめているのではなく、「美術館」を総合的に捉えて各年代の流れを提唱している。 さて、建築物を構成する要素の一つに天井が挙げられる。また...
ショッピングモールにおける形態の変遷に関する研究-1950年から2018年までの世界各地のショッピングモールを対象として-
修士2年の日野原です。研究の途中経過を投稿いたします。 序章 研究概要 0.1 研究の背景 近年、ショッピングモールは衰退していると言われることが多いが、アジアや中東、ヨーロッパなどでは発展し続けている。アメリカ合衆国で発祥したショッピングモールと現在のショッピングモールを比較すると、ショッピングモールは多様な「形態・装飾・用途」に発展している。また、レム・コールハースらは、建築空間としてショッピングモールに焦点を当て、ショッピングモールの発展プロセスに関する研究を行っている。レム・コールハースはショッピングモールを均一な空間であると言い、ジャンクスペースの一例であると言う。しかし、現在のショッピングモールは複雑で多様な空間が広がる。内部と外部と切り離されたテーマパークのような空間が広がる点やモール空間は迷路のような空間が広がる点を挙げる。一方、ショッピングモールは建築空間の研究対象として...
国内の「シェアワークスペース」における空間の分節・接続手法
修士2年の浜本です。2018年度の修士論文の概要を掲載します。 0-1.背景と目的 情報通信技術の発展により働く場を拘束する物理的な要因が減少し、様々なワーカーを対象としたシェアオフィスやコワーキングスペース(以下、CWS)が増加している。それらの新たなシェアを志向するワークプレイスをシェアワークスペース(以下、SWS)と定義する。このSWSは既存の建築計画学や設計論の範疇を超える要請を抱えているものが多く、既存の枠組みの中でその評価軸が明確に確立されているとは言えない。また、このようなSWSでは場を共有することで生まれる交流に価値を見出しているものが多く、ワーカー同士の交流のきっかけを生み出すような空間づくりが行われている。一方、SWSはユーザー相互のプライバシーを保護し、静謐な環境を確保する必要もあり、この対立する要求を設計者はいかにして解決しいているのか。 以上の問題意...
アメリカにおけるショッピングモールの発祥と発展の研究
B4の日野原です。春期の研究内容を投稿させていただきます。 序章 研究の概要 0-1 研究の背景と目的 現代、ショッピングモールは身近な存在かつ生活の中で欠かすことのできない存在であるが、定義は曖昧である。正統な建築の研究対象から外されることも多く、研究している文献も少ない。その少ない文献や洋書ではショッピングモールの歴史に関しては記載があるが、建築的空間の分析が行われていないため、本研究では建築的分析を行うこととする。 また、レム・コールハースは『S,M,L,XL』(図0-1,2)の中で現代の商業空間について語っている。その中で、レム・コールハースは現代の商業空間を建築家の手に負えないグローバルに均質化した空間とし、ジャンクスペースと呼んでいる。レム・コールハースがショッピングモールをジャンクスペース(ゴミの空間)と呼ぶには、建築美よりも経済活動を優先し造られたことを理由としている。マッ...
建築家ルイス・バラガンにおける庭と建築の空間構成手法に関する研究
研究の途中経過を報告します。 1.序章 1.1-3.研究の背景・目的・位置付け 建築家ルイス・バラガンは水面や光を大胆に取り入れた明るい色の壁面が特徴的な住宅を多く設計したことで知られる。バラガンは初期に画家であり造園家であるフェルディナン・バックから強い影響を受けたと言われおり、この点からもバラガンが庭を強く意識していたことがわかる。しかしバラガンはバックの作品のどういった点から影響を受け、自身の作品にどう展開させていったかは明らかにされていない。また、これまで木村の論文ではバラガンの絵画的な空間を、写真をもとに理論的に分析し、矢田の論文では空間が複数の層により構成されていることを明らかにしたが、これらは対象を建築に絞っており、庭を含めた空間構成について分析を行うには至っていない。これらの背景から本研究の目的を ①バラガンがバックから受けた具体的な影響とバラガンによる作品への展開を...
イギリスの教会から集合住宅へのコンバージョンに見るスケルトンとの融和・対立・乖離
修士2年の山本です。修士論文の成果を報告します。 背景と目的 イギリスでは、教会を住宅にコンバージョンした教会転用物件が不動産市場で扱われている。 教会から住宅へのコンバージョンが起こる背景 ①歴史的な建造物を保護する景観規制により古い建物が解体できない。 ②住宅の供給戸数の限定・住宅価格の高騰による慢性的な住宅不足。 ③1900 年代の都市部への人口流入により建設された教会が、脱宗教等で未使用になったが、簡単に壊せない。 ④教会のコンバージョン後の用途は、採算をとるために集合住宅や事務所が一般的である。 ⑤使用材料、構造、デザイン等が質が高いため、教会のコンバージョンへの投資が盛んである。 コンバージョンには主に以下の図の2つの手法がある。 図 主なコンバージョン手法 教会のコンバージョンはこれらの延長なのか。他のコンバージョンと何が違うのか。 ⇨これを明らかにすることが、...
賃貸型集合住宅のリノベーションにおける外部空間の設計手法に関する研究
0.序 0-1.研究の背景・目的 賃貸型集合住宅のリノベーションが注目されて久しい。こうした集合住宅の多くは、供給することに主眼が置かれた団地型住宅や工業化住宅であり、現代の多様化した生活に対応できず荒廃し、近年では様々な手法を用いてリノベーションされている。集合住宅のリノベーションは公的集合住宅での蓄積が多く、約30年の間で間取りの変更といった再生からエレベーターや階段といった共用部を含めた建築全体の再生へと手法が進歩している。このように手法が進歩する中、近年ではウッドデッキの付加や、広場の形成といった外部空間を設計対象にしたリノベーションが、住環境全体の再生を図り、地域コミュニティとしての役割や都市景観向上に寄与している。 こうした外部空間への手法は、リノベーションにおいて可能性を感じさせるが、その手法がどういった意図や効果を持つのか、リノベーションの評価として不明瞭である。そこで、本...
ルイス・バラガンの建築作品における空間の奥行についての研究 ‐絵画的空間構成法をシークエンスの前後関係から読み解く‐
修士二年の矢田です。前期までの修士論文の成果を掲載します。 1 序論 1-1 背景 ルイス・バラガン(Luis Barragan 1902-1988)はメキシコを代表する建築家の一人であり、光、素材、スケールなどにおいて独特な手法を確立した。彼に関する研究では、バラガンの建築空間内の色彩構成を動線と共に記述した小林らによるものや、内部構成を公私空間の連結や配置によって記述した上野ら、空間のシーンにおける壁や天井、開口の面積割合を動線と共に記述し、公私室空間の階層性を提示した井上らの研究がみられる。 本研究室においてはバラガンの建築を絵画的空間の集合体として解釈し、その手法をシーンの中で抽出した木村によるものがある。本研究では木村氏の継続研究という位置づけの論文である。 1-2 先行研究 明治大学大河内学研究室卒業の木村宜子氏の論文の中では、バラガンが建築を作る際の方法や影響を受けた人物につ...