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カステルヴェッキオ美術館の開口部にみられるカルロ・スカルパの修復手法に関する研究

学部4年の山田です。春学期の小論文の成果について報告します。

序章

  • 研究の背景・目的

イタリアの近代建築家カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa,1906~1978)は「改修計画における彼の諸々の作品は、まさに彼の本領を発揮した傑作」と評されており、中でもカステルヴェッキオ美術館(Castelvecchio Museum,Verona,1958-1964)は「再生建築の模範」とされている。カステルヴェッキオ美術館における修復の手法は「創造的修復」や「レスタウロ」と称され、一般的にはもともとの価値を損なわず、新旧が交じり合うことでその価値を向上させるような修復手法であるとされる。スカルパは寡黙な建築家であったことから残された言説は多くないが、設計時のドローイングが数多く残されている。

カステルヴェッキオ美術館内の床と壁の取り合いを見ても分かるように、スカルパはエッジ・境界・外縁に特別に配慮をしており、スカルパらしい空間をつくる一つの要素であると言える。開口部はとくにエッジ・境界・外縁であるためスカルパの配慮が特別になされている。本論では開口部における考察を残されたドローイング、図面、写真を用いて行うことでスカルパの修復の手法を明らかにすることを目的とする。

第二章 スカルパによる修復時におけるドローイングと建築的操作

  • サチェッロ

サチェッロの空間はそれぞれの構成部材が「分離」されているが、「一体化」した「光」により「分離」は強調され、一方で一体感が生まれていると言えることが分かった。

サチェッロ

2.3 未実現の開口部の形のスタディと実際に実現した開口部

スタディを通して構成部材同士の関係性から境界そのものへと意識が変化していったことが分かった。

スタディ1
スタディ2

第三章 開口部における新旧対比について

3.1 修復以前と修復以降の写真による修復の過程

 写真により修復前後の変化を示した。

3.2 新―旧のレイヤーについて

 門扉を代表として開口部には新旧のレイヤーが入り混じり、それぞれがリズムを持っていることで新旧の境界が薄れていくことが分かった。

門扉

第四章 結論と展望

スカルパが設計の際に境界・エッジ・外縁にとくに注意を払い、分離の手法や開口部の形状により境界面での関係性を構築する手法を掲示し、創造的修復と表現されるような修復の手法をレイヤーと強弱のリズムという二つの点から明確化することができた。

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