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スイス・オーストリアにおける大規模木造建築の設計手法 –構造形式と外皮に着目して-
修士2年の早川です。修士研究の途中経過を報告致します。 1.研究の背景 1-1.中央ヨーロッパと大規模木造建築の発展 中央ヨーロッパに位置するドイツ、スイス、オーストリアは現代木造建築の先進国である。3国は豊富な森林資源を有しており、100年以上にわたり持続可能な森林管理を行ってきたという共通点がある。各国の森林率はドイツが31.7%、スイスが30.9%、オーストリアが46.7%である。3国は、世界中で森林が減少傾向にある中で森林面積が増加しており、こうした森林管理によって生み出される豊富な土壌を活かして、技術力の高い木造会社、職人が多く存在し活躍している。1990年代には、職人たちによってこの3カ国でほぼ同時期に、同時並行でCLTが開発された。CLTの開発と共に、木材との相性が良い省エネ環境技術が同時期に発展したことによりプレハブ技術が普及し、2000年代から現代にか...
中庭型の集合住宅の空間配列に関する研究―コモンスペース・境界の分析を通して―
B4藤ノ木です。2023年度春学期に取り組んだ研究内容について発表いたします。 第1 章 研究の概要1-1. 研究の背景、目的 熊本県営保田窪第一団地(図1)は山本理顕によって設計された公営団地である。この集合住宅の特徴の一つに図2 のようなパブリックスペース―住戸―コモンスペースの順番で構成された空間配列がある。これは中庭型の集合住宅が敷地の外に対してコモンスペースよりも先に住戸が配置されていることによって成立している。また、この空間配列にすることによりコモンスペースがよりプライバシー性の高い空間となることと、コモンスペースに出なくとも外に出ることができるため、コモンスペースに関わるのか選択性が生まれる。 以上のように中庭型の集合住宅にはその特徴的な空間配列の構成によって、コモンスペースに対して今まで以上にオープンな関係性を築ける可能性があると同時に、選択性のある共...
カステルヴェッキオ美術館の開口部にみられるカルロ・スカルパの修復手法に関する研究
学部4年の山田です。春学期の小論文の成果について報告します。 序章 研究の背景・目的 イタリアの近代建築家カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa,1906~1978)は「改修計画における彼の諸々の作品は、まさに彼の本領を発揮した傑作」と評されており、中でもカステルヴェッキオ美術館(Castelvecchio Museum,Verona,1958-1964)は「再生建築の模範」とされている。カステルヴェッキオ美術館における修復の手法は「創造的修復」や「レスタウロ」と称され、一般的にはもともとの価値を損なわず、新旧が交じり合うことでその価値を向上させるような修復手法であるとされる。スカルパは寡黙な建築家であったことから残された言説は多くないが、設計時のドローイングが数多く残されている。 カステルヴェッキオ美術館内の床と壁の取り合いを見ても分かるように、スカルパ...
土木と建築の融合 -神田川に現存する船宿と堤防を対象として-
修士2年の柳井です。修士研究の途中経過を報告致します。 1研究の背景 1-1災害対策で非人間的な土木に埋め尽くされる懸念 近年災害は日常的に起こっている。 1995年 阪神・淡路大震災 2004年 新潟県中越地震 2011年 東日本大震災 2016年 熊本地震 など、地震・津波などの大災害は記憶に新しい。今後もこのような災害に見舞われるであろう。その背景から今後作られる建築は災害対策を施すために土木的な役割が増すことが予想できる。都市的な視点から考えれば防潮堤、ミクロな視点では図1のような擁壁である。このような土木ばかりを重視して都市が埋もれていくと、そこに人の居場所や安らぎの場はなくなってしまう。 1-2土木と建築の分断 都市や地域・地区を社会システムというトータルで広域的な観点から捉え、基盤的な空間・...